SSの続き×4
ドンドン書くよ〜(´∀`*)
アザトに抱えられたまま、建物の中を上がっていく。
階段や廊下をいくつも進んで、相当高い所まで上がると内装が一層華やかになる。
豪華絢爛、という華美さがあるわけではないが、その雰囲気から違いが出てきていた。
視線は後ろを歩く兵士の爪先あたりに落として、左目分しかない視界はぼんやりしていた。
わき腹を咬むアザトの手は緩められているが、腕から抜け出す気にはならなかった。
躍起になって騒ぐのも馬鹿らしいし、今は何より腹が痛かった。
アザトがどこかの部屋をノックすると、扉を少し屈んで入った。
『ユシウ、アキを連れてきたぞ。』
『ご苦労だったな、アザト。』
アザトが俺を床に下ろすと、逃げないようにする為か二の腕を掴まれる。
ユシウが俺を見ると、少し目が見開かれた。
『その怪我はどうした。』
『え、だって仕置きをしろって言っただろ?』
茶化すように言ったアザトに、ギロリとユシウが睨みつけた。
アザトは軽く肩を竦めて言った。
『なかなかのじゃじゃ馬でな、兵士達皆を巻き込んで乱闘したんだ。』
『乱闘だと?』
ユシウがこちらをじっと見てくるから、ギンッ、と睨み返す。
ふむ、と呟くと座っていた執務机から立ち上がる。
『本当に双子なのか、お前達は・・・。』
『アザト、秋吉が気が付いたってホント?』
背後の扉が突然開き、ばこっ、とアザトの背中に当たる。
あ、ごめん と苦笑いを浮かべながら謝る春人の声を聞いた。
春人がアザトに腕を掴まれている俺に気づくと、驚いて息を呑む音が聞こえた。
「秋吉!怪我っ、大丈夫?痛くない?あぁ、凄い痛そう・・・」
俺の前に回りこんだ春人は、俺の顔や服の隙間から見える包帯に顔を歪める。
ただその姿かたちで、その声で、いくら気遣われた所で気分が悪いだけだった。
春人とは視線を合わせず、触れようとする手を弾くだけだ。
「触んじゃねぇ。」
低い声で呟くと、春人が体を強張らせた。
「あきよし・・・」
『ハルト。』
後ろからユシウが春人の肩を抱く。
俺は二の腕をアザトに拘束されたまま、拳を握った。
『ハルト、持ってきたのか?』
『う、うん。』
春人がユシウに小さな瓶を渡した。
中身はただの水のようだが、正体は知れない。
ユシウがアザトにそれを渡すと、一言何かを言う。
アザトはまたため息を吐くと、二の腕を掴んでいた手を離し、今度は顎を掴んだ。
自分の腹に頭を押し付ける形で喉を反らされると、俺は自然とアザトを見上げる形になる。
力任せに顎を開かせようとしているのに気づいて、何をしようとしているのか気づいてしまった。
歯を食いしばって抵抗するが、アザトの指が顔にある打撲に移動して痛みに喘いだ瞬間、瓶の中身を口に注がれた。
「げほっ、ごほっ・・・!!」
弾みで呑んでしまった俺は咽せる。
『どうだ、何を言っているか分かるか?』
「!」
俺はばっとユシウを見上げる。
先ほどまでは理解できなかった言葉が、意味を成す言葉で耳に入ってくる。
俺の反応で推し量ったユシウは、ふ、と笑みを浮かべる。
『ようこそハルトの片割れ。私はこの国の王、ユシウだ。』
俺はユシウを睨むように見上げたまま、何も言わない。
ユシウはそんな俺に、腕に抱いた春人の頭に唇を寄せる。
『本当に似ていない双子だな、顔が一緒でなければ兄弟にも思わんな。』
『ユシウ、そんな話をしに呼んだんじゃないだろう?』
春人が恥らうように身を捩るが、俺は胃が捩れる。
どうでもいい二人のじゃれ合いなど見たくは無かった。
『とりあえず今はこの水を飲んでもらう為に呼んだだけだ。こちらの言葉を理解できるようになってもらわん事には、話はすすまんからな。』
ユシウの話を聞くつもりなど毛頭無い俺は、視線は全然違うところへやっていた。
『こちらの言葉を話すようになるにはまた別の方法がいる。そちらはアザト、お前に任せる。精々傷に響かんようにしてやれ。』
『ユシウ!』
にやりと不適に笑うユシウに、アザトが声を上げる。
会話は理解できても、その趣旨が理解できないため、俺はユシウを睨んでおくことしか出来ない。
『ユシウ・・・?』
『さぁハルト、アキは怪我をしているから部屋で寝かせてやろう。』
ユシウが視線でアザトに連れて行くように促すと、アザトは不満そうな表情を浮かべるが視線を他所へやっていた俺には見えなかった。
アザトが連れてきた時と同じように俺を担ぎ上げると、身を屈めて扉をくぐった。
心配そうな表情を浮かべる春人が視界の半分に入ったが、俺は視線を合わせなかった。